平成29年度 御消息(お手紙)

教 書

年の初めは誰もが期待と希望を胸に抱くものですが、今年は少し様相が違いました。大国の指導者が宗教や価値観の違う人を罵り、他国を脅し敵愾心をあおる姿を見聞きして、重苦しい気持ちになりました。力を誇示し、言葉巧みに人々の不満を利用し、自分中心の世界をつくろうとする事がとても危険なことは、過去の歴史が物語っています。わが国にも影響があるでしょう。お念仏に照らし合わせて自身の足元をしっかり見据えましょう。

阿弥陀経の中に「共命鳥(ぐみょうちょう)」という鳥が登場します。命を共にする鳥という字の通り、ひとつの胴にふたつの頭をもっています。はるか昔、ヒマラヤに住んでいたとき、頭のひとつが他の頭を嫉妬して、毒の実を食べさせ、果たして自分も相手もともに死んでしまったそうです。共命鳥が浄土から教えてくれていることは何でしょうか。自分にとって不都合なことがあると、つい「あいつのせいだ」と思ってしまう私たち。みなご縁でつながり、支えあい、ともに生かされて生きている存在であることを忘れてはならないのです。

この夏には善明上人の三回忌をお迎えします。気さくなお人柄でご門徒に親しまれた前門さまは「和」の字を好んで使われました。人が声を荒げ、争う姿に心を痛めておられたことを思い起こします。

お料理の「和え物」は、異なる素材を合わせることで、よりよい味を作り出します。材料のどれか一つが強すぎてもおいしくなりません。

人が和するということも、誰かの色に強引に染められるのではなく、自分の色と他人の色、違った色を互いに認め合うことで、すばらしい色が生じることです。これこそが阿弥陀さまが願われた「みんなが金色に輝く世界」である浄土です。

ともに浄土を想い、お念仏を申しましょう。本年より各地のお寺をお訪ねします。ご門徒のみなさんとお会いすることを楽しみにしております。

 

平成29年 4月 15日

毫摂寺 門主 釋 善志